第1章|1-3 良品・不良品はどう決まる?

良品・不良品の判定方法を解説する機械検査記事のアイキャッチ。ノギスで金属部品を測定するイメージと『良品・不良品はどう決まる?』の文字。

良品・不良品の判定は、「測った数字がそれっぽいか」で決めるものではありません。 図面・仕様書・検査基準などに書かれた要求事項を読み取り、適切な方法で得た検査結果と比較して判断します。

良否判定の基本:
要求事項を確認する → 正しく測る・確認する → 基準と比較する → 合否を判断する

30秒でわかる

良品・不良品は、図面や検査基準で決められた要求に、正しく得た検査結果が適合するかで判断します。

  • 寸法は「基準寸法+上の許容差」「基準寸法+下の許容差」で範囲を求めます。
  • 寸法が範囲内でも、形状・表面・外観など別の要求を満たすとは限りません。
  • 限界値付近では、測定方法・測定器・丸め方・判定ルールを確認します。
  • 不適合や判断できない結果を、検査員の独断で良品扱いにしません。

初めての人は「要求を読む → 測る → 比べる → 判定・記録する」の順に考えれば、数字だけで早合点せずに済みます。

目次 タップで開閉
  1. 良否判定の結果を3つに分ける
  2. 良品・不良品は何を基準に決まる?
  3. 良否判定の基本フロー
  4. 具体例① 20.00 ±0.02 mmの軸径を判定する
  5. 寸法が公差内でも「良品」とは限らない
  6. 公差の境界付近は特に慎重に判断する
  7. 誤判定が起きる代表的な原因
  8. 不適合が見つかったらどうする?
  9. 判定直前の実務チェックリスト
  10. 技能検定「機械検査」につながるポイント
  11. ミニ問題
  12. よくある質問
  13. 参考資料・一次情報
  14. まとめ

1. 良否判定の結果を3つに分ける

  • 適合(要求を満たす):決められた検査項目について、定められた判定ルールにより要求を満たすと確認できた状態です。
  • 不適合(要求を満たさない):少なくとも1項目で要求を満たさない状態です。不適合と「直ちに廃棄する」は同じ意味ではなく、その後の処置は正式な手順に従います。
  • 判定保留(まだ決められない):測定値や図面情報が不足している、判定ルールを確認できないなどの状態です。現場で使う名称や保留手続きは職場の規定に従います。

2. 良品・不良品は何を基準に決まる?

最初に押さえたいのは、良否判定には必ず「比較する相手」が必要ということです。

寸法公差とは、図面に指定された寸法からどこまでの差が許されるかを表す範囲です。良否判定のよりどころになる資料には、次のものがあります。

  • 図面:寸法、公差、幾何公差、表面粗さなど
  • 仕様書:機能・性能・材料・外観などの要求
  • 検査基準:検査項目、方法、頻度、判定方法
  • 作業標準・社内基準:測定位置、測定器、記録方法など
  • 適用規格:製品や検査方法に関係する規格

つまり、検査とは「20.01 mmだった」という測定結果そのものではなく、その結果が要求事項を満たしているかを確認するところまでを含みます。詳しくは「測定」と「検査」の違いで整理しています。

3. 良否判定の基本フロー

  1. 要求事項を確認する
    何を、どの範囲で満たす必要があるのかを読み取ります。
  2. 確認方法を決める
    測定器・測定方法・測定位置・基準面などを確認します。
  3. 測定・観察する
    決められた条件で結果を得ます。
  4. 要求値と比較する
    上限・下限、公差域、外観基準などと比較します。
  5. 合否を判断する
    対象となる要求事項を満たしているか確認します。
  6. 記録する
    必要に応じて測定値・判定結果・ロット情報などを残します。

この順番のポイントは、測定器を持つ前に「何を判定するのか」を決めることです。要求が分からないまま測っても、その数字だけでは良否を判断できません。

要求事項の確認、正しい測定、基準との比較、合否判定までの良品・不良品判定フローを示した図解

4. 具体例① 20.00 ±0.02 mmの軸径を判定する

図面に「φ20.00 ±0.02 mm」と指示されている軸を例に考えます。

この寸法だけを見ると、許容範囲は次のようになります。

項目値
基準寸法20.00 mm
上の許容差+0.02 mm
下の許容差-0.02 mm
上限寸法20.02 mm
下限寸法19.98 mm

上限は20.00 + 0.02 = 20.02 mm、下限は20.00 − 0.02 = 19.98 mmです。図面の寸法範囲は両端を含む19.98〜20.02 mmですが、実際の適合判定では測定不確かさや丸めをどう扱うか、定められたルールを別途確認します。

測定値寸法と範囲の関係
19.97 mm下限19.98 mmを下回る
19.98 mm下限と一致(境界値)
20.01 mm許容範囲内
20.02 mm上限と一致(境界値)
20.03 mm上限20.02 mmを超える

ただし、これは「軸径という1つの寸法要求」だけを見た判定です。部品全体の良否を決めるには、図面上のほかの要求も確認する必要があります。寸法公差そのものは寸法公差とは?で詳しく解説しています。

5. 寸法が公差内でも「良品」とは限らない

軸径が寸法公差内でも、真円度・表面粗さ・外観など必要な要求を満たさなければ、部品全体を良品とは判定できません。 寸法は判定項目の一つにすぎません。

図面には寸法以外にも、次のような要求が入ることがあります。

  • 形状:真円度(円の丸さ)、平面度(面の平らさ)、円筒度(円柱全体の形)。
  • 向き・位置:平行度(平行な向きからのずれ)、直角度(直角からのずれ)、位置度(指定位置からのずれ)、振れ(回転させたときのぶれ)。
  • 表面:表面粗さ(細かな凹凸)、外観(傷・欠けなど)。

たとえば軸径が20.01 mmで寸法公差内でも、真円度の要求を外れていれば、少なくともその要求事項については不適合です。

検査項目結果判定例
軸径20.01 mm要求範囲内
真円度許容値を超過要求を満たさない
総合複数項目を確認「軸径OK」だけで良品とは決められない

寸法公差と幾何公差の役割の違いは寸法公差と幾何公差の違い、幾何公差の全体像は幾何公差とは?で確認できます。

寸法公差φ20.00±0.02 mmに対し、対向2点径20.01 mmは許容範囲内だが、仮想3山断面の最小領域真円度0.03 mmは要求0.01 mm以下を満たさず総合NGとなる例。輪郭変形は誇張した模式図。

6. 公差の境界付近は特に慎重に判断する

測定値が上限・下限から十分離れていれば判断しやすい一方、公差の境界付近では測定条件の影響を無視できません。

  • 測定器の分解能は十分か
  • ゼロ点・基準合わせは正しいか
  • 測定面にゴミ・油・バリはないか
  • 測定力は適切か
  • 測定位置・姿勢は正しいか
  • 温度条件は適切か
  • 測定器の管理状態は適切か

同じ部分を測っても、測定器や測定条件によって結果にはばらつきが生じ得ます。測定不確かさとは、測定対象に合理的に結び付けられる値の広がりを表す考え方です。公差の境界で適合・不適合をどう扱うかは、適用する規格や検査基準に従って、あらかじめ決められた判定ルール(decision rule)で判断します。ILAC G8は、適合性表明に関する判定ルールを解説しています。

特に注意したいのは、都合よく桁を丸めて公差内に入れるような判定です。丸め方法や表示桁、判定ルールが決められている場合は、そのルールに従います。測定誤差については測定誤差とは?も参照してください。

φ20.00±0.02 mmの公差範囲19.98~20.02 mmと上下限、範囲外の例を示し、境界付近では判定ルールと測定条件の確認が必要なことを表した図解。

7. 誤判定が起きる代表的な原因

原因起こりうる問題
図面の見落とし必要な検査項目を確認せず良品判定する
測定器の選定ミス要求精度に対して分解能・測定能力が不足する
測定位置の違い本来確認すべき箇所と違う値で判断する
ゴミ・油・バリ測定値が実際の形状からずれる
温度差熱膨張の影響で寸法が変化する場合がある
記録・転記ミス正しく測っても誤った結果として扱われる

「測定値が出た」ことと、「正しい検査ができた」ことは別です。要求・方法・測定・比較・判定のどこか1つが崩れても、誤判定につながります。

8. 不適合が見つかったらどうする?

不適合が見つかったら、対象品を識別し、決められた手順で報告・処置・記録します。 再検査や手直しの可否、調査するロットの範囲などは職場の品質管理ルールに従います。

  1. 対象を識別する
    良品と混ざらないようにする。
  2. 必要な範囲を確認する
    単品だけか、同一ロットや前後品まで確認が必要かを決める。
  3. 決められたルートで報告する
    自己判断で流さず、責任者や品質部門へつなぐ。
  4. 処置結果を記録する
    再検査、選別、手直し、廃棄など、決められた処置を記録する。

ここで重要なのは、検査員が勝手に「これくらいなら使える」と基準を変更しないことです。図面や規格、正式な承認手順に基づいて処置します。

9. 判定直前の実務チェックリスト

  • 図面:対象品番と図面の改訂版は合っているか。
  • 要求:寸法以外の形状・表面・外観など、必要な検査項目を見落としていないか。
  • 測定:測定器の管理状態、ゼロ点、測定位置・条件は妥当か。
  • 境界:限界値付近の丸め方、不確かさの扱い、保留条件を手順どおり確認したか。
  • 処置・記録:判定結果を正しく記録し、不適合品を識別して所定の報告先につないだか。

10. 技能検定「機械検査」につながるポイント

厚生労働省の技能検定では、機械検査は現在も「機械検査作業」として試験基準が定められています。実技試験には、実際的な対象物や状況について判別・判断・測定・計算などを行う形式が含まれます。

そのため、単に「ノギスの読み方」や「公差計算」を覚えるだけでなく、次の順で考えられることが重要です。

  1. 何を要求されているか読む
  2. 何を測定・確認すべきか決める
  3. 適切な測定方法を選ぶ
  4. 得た結果を基準と比較する
  5. 合否を説明できる

この考え方は、学科だけでなく実技ペーパーや測定方法を説明する問題にもつながります。

11. ミニ問題

Q1. φ20.00 ±0.02 mmの軸を測定して20.01 mmだった。部品全体を良品と断定できる?

答え:断定できません。軸径という寸法項目は範囲内ですが、ほかに幾何公差・表面粗さ・外観などの要求があれば、それらも確認する必要があります。

Q2. 軸径は公差内だが、指定された真円度を外れていた。良品にできる?

答え:そのまま良品とは判断できません。寸法と真円度は別の要求事項です。

Q3. 測定値が上限値と同じ表示だったら必ず合格?

答え:表示値だけで一律に断定するのは避けます。適用する図面・規格・検査基準、測定方法、表示桁、丸め、不確かさの扱いなど、定められた判定ルールを確認します。

12. よくある質問

測定器の最小表示が0.01 mmなら、±0.02 mmの公差を判定できますか?

最小表示(分解能)だけでは判断できません。測定器の誤差・繰返し性・測定方法・測定不確かさを含めて、要求された判定に適した測定能力があるか確認します。

規格から外れていても、使えそうなら出荷してよいですか?

検査員の判断だけで出荷できません。正式な承認に基づく特別採用など、組織で定められた手続きが必要です。不適合品は誤使用を防ぐため識別し、所定の処置を行います。

13. 参考資料・一次情報

参考資料の確認日:2026年10月17日(確認対象:厚生労働省の技能検定情報、ISO/IEC 17020:2026、ILAC G8)

14. まとめ

  • 良否判定は、検査結果を図面・規格・検査基準などの要求事項と比較して行う
  • 寸法が公差内でも、幾何公差や表面粗さなど別の要求を外れれば良品とは限らない
  • 公差境界付近ほど、測定方法・測定器・環境・判定ルールの確認が重要
  • 誤判定を防ぐには「要求 → 方法 → 測定 → 比較 → 判定」の流れを崩さない
  • 不適合を見つけたら、自己判断で基準を変えず決められた処置ルートに従う

良品かどうかを決めるのは「測定値」ではなく、「要求事項と検査結果の比較」です。

関連記事: 測定と検査の違い / 寸法公差とは? / 寸法公差と幾何公差の違い

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  2. […] まずは「測定」と「検査」の違いと、良品・不良品はどう決まる?を理解してから先へ進むと、後の内容がつながりやすくなります。 […]

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