測定値は「表示された数字=そのまま真の値」ではありません。機械検査では、測定値がどの程度ずれる可能性があり、そのずれがどこから来るのかを切り分けることが重要です。
測定誤差は、基本的に測定値と参照値との差です。国際計量用語(VIM)では「測定値 − 参照値」と定義されます。
例:20.000 mmの基準器を測って20.018 mmなら、測定誤差は+0.018 mmです。

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1. 30秒でわかるポイント
- 測定誤差は測定値 − 参照値で考える
- 系統誤差とランダム誤差(技能検定資料では「偶然誤差」)では、原因の探し方と対策が違う
- 測定器だけでなく、作業者・環境・測定物・測定方法も結果へ影響する
- 誤差・不確かさ・公差・分解能は別の概念として整理する
| 種類 | 特徴 | 考え方 |
|---|---|---|
| 系統誤差 | 繰返し測定で一定、または予測可能な傾向を持つ成分 | 原因が分かれば補正できる場合がある |
| ランダム誤差 | 繰返し測定で予測しにくく変動する成分 | 繰返し測定でばらつきの大きさを確認する |

2. 現場例と数値例
測定誤差を理解するときは、最初に「何を参照値として比較しているか」を明確にします。真の値そのものは通常直接には分からないため、校正された標準器や基準値など、目的に応じた参照値を使って考えます。
たとえば、参照値が20.000 mmの基準器を測定し、20.018 mmと表示された場合、測定誤差は次のとおりです。
20.018 − 20.000 = +0.018 mm
「+」は参照値より大きく測定されたことを表します。ただし、同じ測定を何度も行って20.017、20.018、20.019 mmのようにまとまる場合と、19.995〜20.022 mmのように大きく散らばる場合では、疑うべき原因が違います。
| 測定結果の傾向 | まず疑うこと |
|---|---|
| ほぼ同じ方向へずれる | ゼロ点、校正・補正値、温度差、基準の取り方など |
| 測るたびに散らばる | 測定力、姿勢、当て方、測定位置、振動など |
| 特定の位置だけ値が違う | 測定物の形状、バリ、表面状態、真円度・テーパなど |
ここで重要なのは、値が違う原因をすぐ「測定器の故障」と決めつけないことです。測定系全体を順番に切り分ける方が、原因へ早くたどり着けます。
3. 測定誤差を生む5つの要因
機械検査では、誤差要因を測定器・作業者・環境・測定物・測定方法の5つに分けると整理しやすくなります。
| 要因 | 具体例 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 測定器 | ゼロ点ずれ、校正状態、測定面の摩耗 | 基準器で確認できるか |
| 作業者 | 測定力、読み方、当て方、姿勢 | 同じ手順で再現できるか |
| 環境 | 温度、振動、ほこり、湿度 | 測定条件が安定しているか |
| 測定物 | バリ、油、汚れ、粗さ、変形、温度 | 測定面が正常か |
| 測定方法 | 基準、方向、固定、位置、測定器選定 | 要求精度と方法が合っているか |

たとえば外径測定で値が安定しない場合、いきなり測定器を交換するのではなく、測定面の清掃、ゼロ確認、測定位置、測定力、部品温度の順に確認すると原因を絞り込みやすくなります。
4. 誤差・不確かさ・公差・分解能の違い
機械検査で混同しやすいのが、誤差・不確かさ・公差・分解能です。どれも「細かさ」や「ずれ」に関係しますが、意味は異なります。
| 用語 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 測定誤差 | 測定値と参照値との差 | 参照値が必要 |
| 測定不確かさ | 使用した情報に基づき、測定対象量に帰属する量値のばらつきを特徴づける非負のパラメータ | 誤差そのものではない |
| 公差 | 設計・仕様として許容される範囲 | 測定器の性能値ではない |
| 分解能 | 測定器が変化を識別・表示できる細かさに関する性能 | 細かく表示できても、その桁まで正しいとは限らない |
特に「0.001 mmまで表示される=0.001 mmまで正確」ではありません。測定器の校正状態、測定力、温度、測定方法などを含めて結果の信頼性を考える必要があります。
5. 異常値が出たときの切り分け手順
普段と違う値が出たときは、次の順番で確認すると、原因を飛ばしにくくなります。
- 測定面を清掃する:ゴミ、油、切粉、バリを確認する
- ゼロ・基準を確認する:基準器やゼロ点で測定器側の異常を確認する
- 温度条件を確認する:測定器と測定物の温度差や急な温度変化を確認する
- 測定位置と姿勢をそろえる:基準面、方向、当て方を固定する
- 測定力をそろえる:必要に応じて定圧機構を正しく使う
- 繰返し測定する:同じ条件で値の散らばりを見る
- 別の基準・方法でクロスチェックする:必要な場合のみ別測定器や基準器で比較する
繰返し測定でばらつきが小さくなっても、系統的なずれが消えたとは限りません。「再現するから正しい」とは限らない点が重要です。
6. 技能検定につながるポイント
厚生労働省の1級機械検査技能検定の試験基準では、計測用語として系統誤差・偶然誤差、不確かさ、精度、再現性・繰返し性、補正、校正、分散・標準偏差などが挙げられています。また、被測定物に応じた測定器の選択と測定方法、測定時に生じやすい誤差とその防止・補正についても詳細な知識が求められています。
そのため、試験対策でも「用語を暗記する」だけではなく、どの工程で誤差が入り、どう確認・防止するかまで説明できるようにしておくと理解がつながります。

公式範囲:厚生労働省「機械検査技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目」
7. よくある質問
同じ値が何度も出れば、誤差はないと考えていい?
いいえ。繰返し性が良くても、測定系が一定方向へずれていれば系統誤差が残る可能性があります。基準器や校正情報も確認します。
ゼロ合わせをすれば測定誤差はなくなる?
ゼロ点のずれは減らせますが、測定力、温度、測定位置、測定物の状態など別の要因は残ります。
何回も測って平均すれば正しい値になる?
ランダムなばらつきの影響を小さくできる場合はありますが、一定方向の系統誤差は平均しても自動的には消えません。
公差と測定不確かさは同じ?
違います。公差は製品・部品に許容される範囲で、不確かさは測定結果にどの程度の散らばりがあり得るかを示す考え方です。
8. 確認問題
Q1. 20.000 mmの基準器を20.018 mmと測った。測定誤差はいくら?
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答え:+0.018 mmです。測定値 − 参照値で求めます。
Q2. 同じ部品を測って19.998、20.003、20.001 mmと少しずつ変わる。まず何を考える?
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答え:測定力、当て方、位置、環境などによるランダムな変動を含め、測定条件を確認します。
Q3. 0.001 mmまで表示できる測定器なら、0.001 mmの正確さが保証される?
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答え:保証されません。分解能と測定の正確さは別の概念です。
Q4. 繰返し測定の平均を取れば、系統誤差も必ず消える?
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答え:消えるとは限りません。系統誤差は原因の確認や補正が必要です。
9. まとめ
- 測定誤差は測定値と参照値との差として考える
- 系統誤差とランダム誤差では、原因の探し方と対策が異なる
- 原因は測定器だけでなく、作業者・環境・測定物・測定方法にもある
- 誤差・不確かさ・公差・分解能は別の概念として扱う
- 異常値は、清掃→基準確認→温度→位置・姿勢→測定力→繰返し→クロスチェックの順で切り分ける
- 繰返し性が良くても、系統的なずれがないとは限らない
10. 参考資料・一次情報
- BIPM / JCGM VIM|Measurement error
- BIPM / JCGM VIM|Systematic measurement error
- BIPM / JCGM VIM|Random measurement error
- BIPM / JCGM VIM|Measurement uncertainty
- NIST Technical Note 1297|Measurement Uncertainty
- 産業技術総合研究所|不確かさWeb
- 厚生労働省|機械検査技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目
最終確認:2026年10月1日|著者:UG|1級試験基準では「系統誤差及び偶然誤差」「不確かさ」「補正」「校正」「分散及び標準偏差」等を確認済み
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