「精度」とは、測定の良さを表すときに使われる言葉ですが、何を指すかは文脈によって変わります。機械検査では、精確さ(総合精度)、真度(正確さ)、精密さ(精度)を区別して考えます。
10.000 mmの基準器を測って、毎回10.050 mmだったら「正しく測れた」と言えるでしょうか。 値はそろっていますが、参照値から0.050 mmずれています。
この記事では、JIS Z 8103:2019の用語に沿って、基準への近さと繰返し測定値のそろい方を、説明用の測定例で整理します。
結論:精度という言葉だけでは、基準への近さと測定値のそろい方を区別できません。
- 精確さ(総合精度):測定値と真の値との一致の度合い。
- 真度(正確さ):反復測定の平均と参照値との一致の度合い。
- 精密さ(精度):指定した条件で繰返した測定値同士の一致の度合い。
- ばらつき:測定値の散らばり。レンジや標準偏差などで確認する。
- 判断のポイント:「精度」をどの意味で使うか確認し、基準との差とばらつきを別々に見る。
値がそろっていても基準からずれることがあります。説明用の測定例だけで、測定能力や製品の合否は判断できません。
目次 タップで開閉
1. 精確さ・真度・精密さ・ばらつきを比較
- 精確さ(accuracy/総合精度)は、測定値と真の値の一致の度合いを表す、総合的な概念です。
- 真度(trueness/正確さ)は、無限回の反復測定を想定した平均と参照値の一致の度合いです。実際の有限回測定では、平均と参照値の差などからかたよりを推定します。
- 精密さ(precision/精度)は、指定した条件で繰返した測定値同士の一致の度合いです。
- ばらつきは、測定値の散らばりです。簡単な比較には最大値−最小値(レンジ)を使えますが、精密さの統計的評価には標準偏差なども使います。
| 用語(JIS Z 8103:2019) | 何を見る? | 現場でのイメージ |
|---|---|---|
| 精確さ・総合精度 | 測定値と真の値の一致の度合い | 基準への近さと値のそろい方を総合して考える |
| 真度・正確さ | 反復測定の平均と参照値の近さ | 一定方向の偏りが小さいか |
| 精密さ・精度 | 反復測定値同士の一致の度合い | 測定値の散らばりが小さいか |
| ばらつき | 測定値の散らばりそのもの | レンジ・標準偏差などで確認 |

2. 「精度・正確度」を規格用語で整理する
検索では「精度と正確度の違い」と表現されることがありますが、「精度」という言葉だけでは、基準への近さを指すのか、繰返し値のそろい方を指すのかが曖昧です。JIS Z 8103:2019と国際計量用語集VIMでは、accuracyを精確さ(総合精度)、truenessを真度(正確さ)、precisionを精密さ(精度)として区別します。規格用語としての「正確さ」は真度の別名なので、日常会話でいう「基準に近い」という意味と混同しないようにします。
| 検索で使われやすい言葉 | この記事で分けて考える概念 | 確認するポイント |
|---|---|---|
| 精確さ・総合精度 | accuracy | 測定値が真の値にどれだけ近いか |
| 真度・正確さ | trueness | 繰返し測定の平均が参照値にどれだけ近いか |
| 精度(日常語) | 文脈で意味が変わりやすい | 「精確さ」なのか「精密さ」なのかを具体化する |
| 精密さ・精度 | precision | 繰返し測定値同士がどれだけそろっているか |
| ばらつき | 散らばりの大きさ | レンジ・標準偏差などで評価する |
結論として、「精度が良い」とだけ言わず、真値への近さ・平均の偏り・ばらつきのどれを評価しているのかを明確にすると、測定結果を誤解しにくくなります。VIMではmeasurement accuracyは数値そのものではなく定性的な概念で、measurement precisionとは区別されています。
3. 4パターンで見ると違いがわかりやすい
| 状態 | 基準への近さ | ばらつき | 現場での見方 |
|---|---|---|---|
| ① 基準に近く、そろっている | 良い | 小さい | 望ましい状態 |
| ② 基準からずれているが、そろっている | 悪い | 小さい | 系統的なずれを疑う |
| ③ 平均は基準付近だが、散らばる | 平均では近い | 大きい | 測定条件・測定力などを疑う |
| ④ 基準からずれ、さらに散らばる | 悪い | 大きい | 原因が複数ある可能性 |
「毎回同じ値が出る=正しい」ではなく、「基準への近さ」と「値同士のそろい方」を2軸で見るのがポイントです。

4. 数値例|基準値10.000 mmを5回測る
参照値が10.000 mmの基準器を、同じ条件で5回測定したと仮定します。以下は理解のために作った架空のデータであり、UG BASEの実測結果ではありません。 平均値は5回の測定値の合計÷5、レンジは最大値−最小値で求めます。表の「平均−参照値」は有限回の結果から求めた差であり、真度そのものの数値ではありません。この5回の値だけで正式な測定能力や製品の合否は判定できません。
| 例と5回の測定値(mm) | 計算結果と読み取り |
|---|---|
| A|基準に近く、そろう 10.001 / 9.999 / 10.000 / 10.001 / 9.999 | 平均:10.000 mm 平均−参照値:0.000 mm レンジ:0.002 mm この5回では基準付近でそろっています。 |
| B|そろうが、基準からずれる 10.051 / 10.050 / 10.049 / 10.050 / 10.051 | 平均:10.0502 mm 平均−参照値:+0.0502 mm レンジ:0.002 mm Aと同じレンジでも、基準より高い値です。 |
| C|平均は合うが、散らばる 9.960 / 10.040 / 9.980 / 10.020 / 10.000 | 平均:10.000 mm 平均−参照値:0.000 mm レンジ:0.080 mm 平均はAと同じですが、レンジはAの40倍です。 |
| D|ずれも散らばりも大きい 10.050 / 10.110 / 10.080 / 10.130 / 10.090 | 平均:10.092 mm 平均−参照値:+0.092 mm レンジ:0.080 mm 基準との差と散らばりを分けて確認します。 |
5. 系統誤差・ランダム誤差との関係
前の記事で解説した誤差の種類と組み合わせると理解しやすくなります。
| 現象 | 考えやすい誤差 | 例 |
|---|---|---|
| 基準から一定方向へずれる | 系統誤差 | ゼロ点、校正、一定した温度差 |
| 測るたびに値が散らばる | ランダム誤差 | 測定力、位置、当て方、読み取りの微差 |
| ずれも散らばりもある | 両方の可能性 | 基準ずれ+作業条件の不安定 |
実務では「系統誤差なら必ずこの原因」「ランダム誤差なら必ずこの原因」と単純には決められません。測定器・作業者・環境・測定物・測定方法を順に確認して切り分けます。

6. 繰返し性と再現性も分けて考える
繰返し性と再現性は、どちらも「精密さ」を測定条件の違いで分けた考え方です。同じ条件で値がそろうかを見るのが繰返し性、条件を変えても結果がそろうかを見るのが再現性です。
| 項目 | 主な条件 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 繰返し性 | 同じ測定手順・作業者・測定系・場所などで短時間に繰返す | 同一条件で測定値がどれだけそろうか |
| 再現性 | 場所・作業者・測定系などの条件を変える | 条件が変わっても結果がどれだけそろうか |
たとえば、同じ作業者が同じマイクロメータで同じ部品を短時間に5回測るのは繰返し性の確認に近い考え方です。別の作業者や別の測定系でも結果が大きく変わらないかを見ると、より広い条件での再現性を確認できます。実際の評価では、どの条件を同じにし、どの条件を変えたかを明記します。
7. 現場で値が合わないときの確認順
- 測定面・測定物を清掃する
- ゼロ点・基準器を確認する
- 温度や測定物の温度なじみを確認する
- 測定位置・方向・姿勢を固定する
- 測定力をそろえる
- 同じ条件で複数回測り、平均とばらつきを見る
- 別の人・別の測定器・別の基準でクロスチェックする
確認するときは、原因になりそうな条件を一度に複数変えないことが大切です。例えば作業者と測定器を同時に替えて値が変わると、どちらが影響したのか判断しにくくなります。上の7手順で測定条件をそろえて原因を切り分け、異常が残る場合は職場の保留・報告手順に従ってください。

8. 公差判定では平均だけを見ない
ここまでの10.000 mmの数値例は、基準器を測って測定系の状態を考える例です。一方、製品の公差判定は、製品寸法が仕様の許容範囲に入っているかを判断する別の作業です。繰返し測定の平均が公差中央付近でも、ばらつきが大きければ、個々の測定値や合否の判断に注意が必要です。
逆に、値がよくそろっていても、測定系に一定方向のずれがあれば合否を誤る可能性があります。製品公差・測定誤差・ばらつき・測定不確かさは別の概念です。特に公差限界付近では測定不確かさと判定ルールの扱いが重要になるため、社内の正式な測定・合否判定手順を優先し、平均値だけで自己判断しないでください。

9. よくある間違い
- ばらつきが小さい=正しいと決める
- 平均が基準値に合う=測定は安定していると決める
- 1回の測定だけで「精度が良い・悪い」と判断する
- 「精度」という言葉だけで正確さと精密さをまとめてしまう
- 表示桁数が細かい測定器ほど、必ず正確だと思う
- 測定器だけを原因にして、温度・測定力・位置・測定物を確認しない
表示桁数と測定の正確さの違いは、次の記事「分解能・最小読取値とは?」で詳しく整理します。

10. 🎓 技能検定につながるポイント
技能検定や実務説明では、用語だけを暗記するより、「基準からどれだけずれているか」と「繰返し値がどれだけ散らばっているか」を分けて説明できることが重要です。
① 基準値を確認する
② 同じ条件で複数回測定する
③ 平均値を見る
④ 最大−最小や標準偏差などでばらつきを見る
⑤ 基準からのずれと、ばらつきを分けて評価する
⑥ ずれが大きければ系統要因、散らばりが大きければ測定条件を中心に確認する

11. 確認問題
Q1. 毎回ほぼ同じ値が出れば、その測定は必ず正しい?
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答え:いいえ。繰返し値がよくそろっていても、基準から一定方向にずれている可能性があります。精密さが良くても真度が良いとは限りません。
Q2. 基準値10.000 mmに対して、5回測った平均が10.000 mmなら問題なし?
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答え:平均だけでは判断できません。9.960〜10.040 mmのように大きく散らばっている可能性があります。各測定値とばらつきも確認します。
Q3. 「精度が良い」と言われたら、何を確認する?
答えを見る
答え:基準への近さを意味しているのか、繰返し測定のばらつきが小さいことを意味しているのかを確認します。可能なら誤差・平均値・レンジ・標準偏差など具体的な指標で表します。
12. よくある質問
精度と正確度はどう違いますか?
「精度」は、分野や文脈によって「精確さ(総合精度)」または「精密さ(精度)」を指す場合があるため、何を評価しているかを確認します。
JIS Z 8103:2019では、精確さ(総合精度)は測定値と真値の一致の度合い、真度(正確さ)は反復測定の平均と参照値の一致の度合い、精密さ(精度)は反復測定値同士の一致の度合いを表します。
なお、測定器について使われる「正確度」は、推定したかたよりの限界値を指す場合があるため、仕様書の定義を確認してください。
正確さと精密さは同じですか?
同じではありません。基準値への近さと、繰返し測定の散らばりの小ささは分けて考えます。
平均値が合っていれば測定は問題ありませんか?
限りません。平均が参照値に近くても、個々の測定値が大きく散らばる場合があります。まず同一条件での繰返し性や測定条件を確認し、必要に応じて作業者・測定系など条件を変えた再現性も切り分けます。
13. 参考資料・一次情報
- BIPM / JCGM VIM|2.13 Measurement accuracy
- BIPM / JCGM VIM|2.14 Measurement trueness
- BIPM / JCGM VIM|2.15 Measurement precision
- BIPM / JCGM VIM|2.20 Repeatability condition of measurement
- BIPM / JCGM VIM|2.21 Measurement repeatability
- BIPM / JCGM VIM|2.24 Reproducibility condition of measurement
- BIPM / JCGM VIM|2.25 Measurement reproducibility
- 厚生労働省|機械検査技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目
- 産業技術総合研究所|不確かさWeb
- 日本電気計器検定所(JEMIC)|計測関係用語集(JIS Z 8103:2019)
技術内容の最終確認:2026年10月9日。JIS Z 8103:2019の日本語用語と、JCGM VIMのaccuracy・trueness・precisionの定義を照合しました。測定器の校正・製品判定は、使用する規格と職場の正式な手順に従ってください。
14. まとめ
- 正確さと精密さは別の概念
- 真度は繰返し測定の平均と参照値の近さに関係する
- 精密さは繰返し測定値同士の一致度に関係する
- ばらつきが小さくても、一定方向へずれていることがある
- 平均が基準値に合っていても、ばらつきが大きいことがある
- 現場では基準値との差+平均+ばらつきを分けて確認する
- 「精度が良い」ではなく、何が良いのかを具体化する
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