穴基準方式と軸基準方式は、「はめあい」を作るときに、穴側と軸側のどちらを基準として公差域を組み合わせるかを決める考え方です。一般には穴基準方式が採用しやすい場面が多い一方、軸寸法を固定した方が合理的な場合は軸基準方式を使います。
ポイントは、穴基準=穴に公差がない、軸基準=軸に公差がない、という意味ではないことです。どちらにも公差幅があり、その公差域の「位置」を基準にして組合せを作ります。
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1. 30秒でわかるポイント
- 穴基準方式:基準となる穴の公差域を固定し、組み合わせる軸の公差域を変えて必要なはめあいを作る
- 軸基準方式:基準となる軸の公差域を固定し、組み合わせる穴の公差域を変える
- ISO/JISのコード方式では、基準穴はH、基準軸はhで表す
- Hやhは公差域の位置、7や6などの数字は公差等級に関係する
- 正確な許容差の数値は、基準寸法と公差クラスに応じて規格表で確認する

2. 穴基準方式とは?
穴基準方式は、穴側を基準にして、軸側の公差域を変えることで、すきまばめ・中間ばめ・しまりばめなどを作る方式です。
ISO 286 / JIS B 0401のコード方式では、基準穴としてHが使われます。H穴は基準寸法に対する下側のサイズ許容差が0となる位置に公差域を持ち、そこから公差等級に応じた幅が上側へ広がります。
たとえば「H7」と書かれている場合、Hは穴の公差域の位置、7は公差等級を示します。H7という記号だけで実際の上限寸法が一律に決まるわけではなく、基準寸法に応じて規格表から許容差を確認します。
3. 軸基準方式とは?
軸基準方式は、軸側を基準にして、穴側の公差域を変える方式です。共通の軸を使い、相手側の穴寸法を変えて必要なはめあいを作りたい場合などに適します。
基準軸はhで表され、h軸では基準寸法に対する上側のサイズ許容差が0となる位置に公差域を持ちます。たとえばh6なら、hが公差域の位置、6が公差等級です。
軸基準方式でも、軸そのものに寸法ばらつきがないわけではありません。h6などの公差幅の中で製作し、その軸に対して穴側の公差クラスを組み合わせます。
4. H穴・h軸は何を意味する?
| 記号 | 対象 | ゼロ線との関係 | 意味 |
|---|---|---|---|
| H | 穴 | 下側のサイズ許容差が0 | 穴基準方式の基準穴 |
| h | 軸 | 上側のサイズ許容差が0 | 軸基準方式の基準軸 |
大文字は穴、小文字は軸を表します。Hやh以外の文字は、公差域が基準寸法のゼロ線に対してどの位置にあるかを示します。
ここでいう「0」は公差幅が0という意味ではありません。H穴なら公差域の下端、h軸なら公差域の上端がゼロ線に一致する、という意味です。
5. 穴基準方式と軸基準方式を比較
| 比較項目 | 穴基準方式 | 軸基準方式 |
|---|---|---|
| 基準にする側 | 穴 | 軸 |
| 代表記号 | H | h |
| 調整する側 | 主に軸の公差域 | 主に穴の公差域 |
| 採用しやすい場面 | 標準的な穴加工工具を使い、軸側で寸法を調整しやすい | 共通軸や既製・標準化された軸を固定したい |
| 注意点 | 穴にも公差幅がある | 軸にも公差幅がある |
どちらが「上位」や「高精度」という関係ではありません。製品機能、加工方法、標準工具、部品の共通化、コストなどに合わせて選ぶ方式です。
6. なぜ穴基準方式がよく使われる?
一般的な機械加工では、ドリル、リーマなどの穴加工工具には決まった寸法系列があり、穴側の寸法を多数用意するより、穴側を一定の基準クラスにして軸径を旋削・研削などで調整する方が合理的な場合があります。
そのため穴基準方式は広く使われます。ただし「穴基準が常に正解」という意味ではありません。製品構造や加工工程によっては軸基準方式の方が部品共通化やコスト面で有利になることがあります。

7. 軸基準方式が向くケース
軸基準方式が使いやすい代表例は、軸側の寸法を変えにくい、または変えたくない条件がある場合です。
- 同じ軸に複数の部品を組み合わせ、穴側で各はめあいを作り分けたい
- 軸が標準品・既製品などで、軸寸法を固定した方が合理的
- 加工工程上、軸側を共通化する方が工具・工程・在庫を減らせる
- 製品機能上、基準とする軸寸法を固定する必要がある
実際の設計では、加工しやすさだけでなく、交換性、機能、組立性、検査性まで含めて決めます。
8. H7/g6などの記号はどう読む?
はめあいの図面では、たとえばH7/g6のような組合せが使われます。
| 部分 | 読み方 |
|---|---|
| H | 穴の公差域の位置 |
| 7 | 穴の公差等級 |
| g | 軸の公差域の位置 |
| 6 | 軸の公差等級 |
文字と数字をセットで読むことが重要です。文字だけでは公差幅が分からず、数字だけではゼロ線に対する公差域の位置が分かりません。
また、実際の上限・下限寸法や最大すきま・最小すきまを求めるには、基準寸法とJIS B 0401-2などの表を使って許容差を確認します。

9. 実務で基準方式を選ぶ手順
- 必要な機能を決める:回転、滑動、位置決め、圧入など、組合せに何を求めるかを明確にする
- 必要なはめあいを決める:すきま、中間、しまりのどの関係が必要かを決める
- 穴・軸のどちらを基準にすると合理的か考える:加工法、標準工具、部品共通化を確認する
- 公差クラスを選ぶ:必要な公差域位置と等級を決める
- 規格表で限界寸法を確認する:基準寸法に対応する許容差を確認する
- 加工能力と検査方法を確認する:実際に作れて、測れて、判定できる仕様か確認する
設計値だけでなく、「その公差を工程で安定して作れるか」「検査で確実に判定できるか」まで考えると、現場で扱いやすいはめあいになります。
10. よくある間違い
- 「H穴は寸法が固定」 → 誤り。H穴にも公差幅がある
- 「h軸は公差ゼロ」 → 誤り。h軸にも公差幅がある
- 「数字が小さいほど必ず高性能なはめあい」 → 公差幅は狭くなる方向だが、必要機能・加工性・コストとのバランスが必要
- 「H7/g6と書いてあれば寸法を見なくてもすきま量が分かる」 → 誤り。実際の許容差は基準寸法によって変わる
- 「穴基準方式が常に正しい」 → 誤り。軸側を固定した方が合理的な設計もある

11. 技能検定につながるポイント
機械検査の学習では、はめあい記号を見て穴側と軸側のどちらが基準か、公差域の位置と公差等級をどう読むかを整理しておくと、寸法公差・測定器選定・良否判定の理解につながります。
記号を丸暗記するより、次の順番で考える方が実務にも試験にも応用しやすくなります。
- 穴か軸かを大文字・小文字で判別
- 文字から公差域の位置を確認
- 数字から公差等級を確認
- 基準寸法に応じた許容差を表で確認
- 穴と軸の限界寸法からすきま・しめしろを考える
12. FAQ・確認問題
穴基準方式の「H」は何を意味しますか?
穴の公差域の位置を表す記号です。基準穴Hでは、基準寸法に対する下側のサイズ許容差が0になります。
軸基準方式の「h」は何を意味しますか?
軸の公差域の位置を表す記号です。基準軸hでは、基準寸法に対する上側のサイズ許容差が0になります。
穴基準方式の方が精度が高いのですか?
そうではありません。基準方式はどちら側を基準に公差域を組み合わせるかの違いで、必要精度は公差等級や設計要求で決まります。
Q1. 穴基準方式で基準になる代表的な穴の記号は?
答え:Hです。
Q2. h6の「6」は何を表す?
答え:公差等級です。hは軸の公差域位置を表します。

13. 参考資料・一次情報
- 日本規格協会|JIS B 0401-1:2016
- 日本規格協会|JIS B 0401-2:2016
- ISO|ISO 286-1:2010(2026年再確認・現行)
- ISO|ISO 286-2:2010
JIS B 0401-1:2016およびJIS B 0401-2:2016は2025年6月に有効性が確認されています。JIS B 0401-1はISO 286-1:2010、JIS B 0401-2はISO 286-2:2010と一致対応です。ISO 286-1:2010は2026年にも再確認され、現行規格です。
最終確認:2026年10月1日|著者:UG

14. まとめ
- 穴基準方式はH穴を基準にして、軸側の公差域を変える
- 軸基準方式はh軸を基準にして、穴側の公差域を変える
- H穴は下側のサイズ許容差が0、h軸は上側のサイズ許容差が0
- H・hは公差域の位置、7・6などの数字は公差等級を示す
- 穴基準は一般に加工上採用しやすいが、軸側を固定したい条件では軸基準が合理的な場合がある
- 正確な許容差・限界寸法は基準寸法と規格表で確認する

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