マルテンサイトは、焼入れで鋼を硬化させる中心的な組織です。『急冷したから硬い』のではなく、急冷によってこの組織が形成されることが重要です。
まず結論
マルテンサイトは、オーステナイトから急冷したときに生じる無拡散変態生成物です。炭素を過飽和に含むため結晶格子がひずみ、一般に高い硬さを示します。
無拡散変態とは?
フェライトやパーライトの形成のように炭素が長距離移動するのではなく、原子の協調的な移動によって結晶構造が変化します。そのため比較的低温側で急速に形成できます。
なぜ硬い?
炭素の過飽和固溶、格子ひずみ、高い転位密度などが変形を妨げるためです。マルテンサイトの硬さは炭素量などにも強く影響されます。
硬いだけでは使いにくい
焼入れ直後のマルテンサイトは高硬さですが、残留応力が大きく靭性が不足しやすいため、多くの場合は焼戻しを行い、必要な硬さと靭性のバランスに調整します。
Ms点・Mf点
冷却中にマルテンサイト変態が始まる温度をMs、変態がほぼ終了する側の温度をMfと呼びます。これらは鋼の化学成分などで変わります。
全部マルテンサイトになるとは限らない
部品内部の冷却速度が足りない、鋼の焼入性が低い、残留オーステナイトが残るなどにより、断面全体が同じ組織になるとは限りません。
まとめ
第16回では、マルテンサイトとは?を理解しました。熱処理の結果は鋼種・寸法・前組織・加熱条件・冷却条件などで変わるため、実務では図面・材質規格・熱処理仕様・作業標準を優先してください。
参考
金属熱処理 初心者講座

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