はめあいとは、組み合わせる穴と軸のサイズ公差を設計し、組立後の「動きやすさ」「位置決めのしやすさ」「固定の強さ」をコントロールする考え方です。単純に穴径と軸径を比較するだけではなく、穴と軸それぞれの公差域の組合せで、すきまばめ・中間ばめ・しまりばめが決まります。
機械検査では、穴と軸がそれぞれ単品で公差内かを確認するだけでなく、組み合わせたときの最小すきま・最大すきま、または最小しめしろ・最大しめしろまで理解しておくと、図面の意図を正しく読めます。
30秒でわかるポイント
- 穴の実寸法 − 軸の実寸法がプラスならすきま、マイナスならしめしろになる
- 穴と軸の公差域の位置関係ですきまばめ・中間ばめ・しまりばめに分かれる
- 記号の大文字は穴、小文字は軸を表す
- H7/g6の「H・g」は公差域の位置、「7・6」は公差域の幅を決める公差等級
- 穴基準ではHを基準に軸側の記号を変えて、目的のはめあいを作る
- 寸法が公差内でも、バリ・温度・真円度・粗さなどで組付け感が変わることがある

はめあいとは?|穴と軸を「組み合わせ」で考える
はめあいでは、穴と軸を別々の部品として見るだけでは不十分です。重要なのは、組み立てたときに両者のサイズ差がどうなるかです。
| 目的 | 必要な状態の例 | はめあいの方向性 |
|---|---|---|
| 滑らかに回転・摺動させたい | 軸が穴の中で動ける | すきまを持たせる |
| 高精度に位置決めしつつ組立もしたい | すきま又は小さなしめしろ | 中間的な関係 |
| 圧入して固定したい | 軸を穴へ押し込んで保持 | しめしろを持たせる |
「きついほど高精度」「ゆるいほど組み立てやすい」という単純な話ではありません。回転、摺動、位置決め、圧入、分解性、荷重など部品の機能に合わせて選びます。

すきまとしめしろ|基本の計算
実際に測った穴と軸を組み合わせる場合、基本式は非常にシンプルです。
穴のサイズ − 軸のサイズ
結果がプラス → すきま
結果がマイナス → その絶対値がしめしろ
例1:穴20.02 mm、軸20.00 mmなら、20.02 − 20.00 = 0.02 mmのすきまです。
例2:穴19.99 mm、軸20.01 mmなら、19.99 − 20.01 = −0.02 mmなので、0.02 mmのしめしろがあります。

3種類のはめあい|すきまばめ・中間ばめ・しまりばめ
| 種類 | 穴と軸の関係 | 特徴 |
|---|---|---|
| すきまばめ | 最小条件でもすきまが確保される | 組立・分解しやすく、回転や摺動に向く |
| 中間ばめ | 組合せによってすきま又はしめしろになる | 位置決めなどで使われる |
| しまりばめ | 最小条件でもしめしろが生じる | 圧入・固定に向く |
ここでのポイントは、単品の実測値ではなく公差域全体の位置関係で分類することです。ある1組だけにすきまがあったからといって、その公差クラスの組合せが必ず「すきまばめ」とは限りません。

公差域で見ると、はめあいが理解しやすい
図面の基準サイズをゼロ線として考えると、穴と軸それぞれの許容サイズ範囲を「公差域」として表せます。
- 穴の公差域が軸より完全に上側 → すきまばめ
- 穴と軸の公差域が重なる → 中間ばめ
- 軸の公差域が穴より完全に上側 → しまりばめ
この公差域の位置を決めるのがアルファベットで、幅を決めるのが数字のIT公差等級です。記号を暗記するより、ゼロ線と公差域の位置関係をイメージできる方が実務では強くなります。

H7/g6の読み方|文字と数字は何を表す?
代表的な表記「H7/g6」を例にすると、前半が穴、後半が軸です。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| H | 穴の基礎となるサイズ差の位置。大文字なので穴 |
| 7 | 穴の公差等級。公差域の幅を決める |
| g | 軸の基礎となるサイズ差の位置。小文字なので軸 |
| 6 | 軸の公差等級。公差域の幅を決める |
大文字=穴、小文字=軸はまず覚えておきたい基本です。また、同じH7/g6でも具体的な上下の許容差は基準サイズによって変わるため、記号だけ見て数値を固定してはいけません。

Hとhが特別に見える理由|ゼロ線との関係
穴のHは下のサイズ差がゼロ、軸のhは上のサイズ差がゼロになる基本的な公差域です。
- 穴H:公差域が基準サイズのゼロ線から上側に伸びる
- 軸h:公差域がゼロ線から下側に伸びる
この性質から、穴Hを固定して軸側の位置を変える穴基準はめあい、軸hを固定して穴側の位置を変える軸基準はめあいを理解しやすくなります。

IT公差等級とは?|数字が小さいほど公差域は狭い
H7やg6の数字は、ISO/JISの標準公差等級(IT等級)を示します。一般に同じ基準サイズなら、数字が小さいほど公差域は狭く、より厳しいサイズ管理になります。
ただし「IT6なら何mm」と固定されているわけではありません。公差幅は基準サイズ区分によって変わります。したがって、文字=公差域の位置、数字=公差域の幅という役割分担で覚えるのが基本です。
覚え方:アルファベットで「どこに置くか」、数字で「どれくらいの幅か」を決める。

穴基準と軸基準|何が違う?
| 方式 | 固定する側 | 考え方 |
|---|---|---|
| 穴基準 | Hの穴 | 穴を基準に、軸の公差域を変えてはめあいを作る |
| 軸基準 | hの軸 | 軸を基準に、穴の公差域を変えてはめあいを作る |
一般的な機械設計では穴基準方式を目にすることが多く、JIS B 0401-1に基づく推奨組合せでもH穴を基準にした例が多く示されています。ただし、実際の選択は加工方法、標準部品、組立構造、コストなどによって決まります。

代表的な組合せ|H7/g6・H7/k6・H7/p6
穴基準方式では、軸側の公差域を変えることで性格の違うはめあいを作れます。代表例として次のような組合せがあります。
| 組合せ例 | 代表的な分類 | イメージ |
|---|---|---|
| H7/g6 | すきまばめ | 回転・摺動など、すきまを必要とする用途 |
| H7/k6 | 中間ばめ | 位置決めしつつ組立性も考慮する用途 |
| H7/p6 | しまりばめ | 圧入など、固定力が必要な用途 |
これは代表的な考え方です。必要なすきま・しめしろ、荷重、温度、材質、組立方法などによって適切な公差クラスは変わります。具体的な上下偏差は、基準サイズと組み合わせて表から確認します。
UG BASE内では、実際の公差値を確認できるはめあい公差検索・一覧表も使えます。

最大すきま・最小すきまを計算する方法
公差付きの穴と軸では、実際のサイズが許容範囲内で変動するため、はめあいも1つの値ではなく範囲になります。
最小すきま = 穴の下の許容サイズ − 軸の上の許容サイズ
最大すきま = 穴の上の許容サイズ − 軸の下の許容サイズ
例えば、穴が20.000〜20.020 mm、軸が19.990〜20.000 mmなら、最小すきまは0.000 mm、最大すきまは0.030 mmです。この組合せでは、最もきつい条件でも軸が穴より大きくならないため、すきま側のはめあいになります。
中間ばめでは計算結果が「すきま側」と「しめしろ側」の両方にまたがり、しまりばめでは全組合せで軸の方が大きくなります。

検査実務|穴と軸をどう測る?
はめあい部では、穴と軸をそれぞれ適切な測定器で測り、図面の公差クラスから求めた許容サイズと比較します。
| 対象 | 測定器の例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 軸の外径 | 外側マイクロメータ | 複数方向・複数位置で測り、真円度やテーパ傾向にも注意 |
| 穴径 | 内側マイクロメータ、シリンダゲージ等 | 基準合わせ、測定位置、傾きに注意 |
| 量産の限界判定 | 限界ゲージ | GO/NO-GOの判定ルールと摩耗管理が必要 |
穴と軸がそれぞれ公差内でも、実際にどの程度のすきまになるかは実測値の組合せで変わります。機能確認まで必要な場合は、単品の合否だけでなく組合せの状態も確認します。

寸法だけでは決まらない|温度・粗さ・形状・バリ
理論上のはめあいと、実際の組付け感が一致しないことがあります。主な原因は次のとおりです。
- 温度:穴や軸が熱膨張すると実サイズが変わる
- 表面粗さ:粗い表面では接触状態が変わり、圧入感や摺動抵抗に影響する
- 真円度・円筒度:平均的な径が公差内でも、局部的に当たることがある
- バリ・打痕・汚れ:数値上は合格でも組立不能の原因になる
- コーティング・めっき:処理後寸法が変わるため、どの工程の寸法を保証するか確認が必要
- 測定力・姿勢:測り方による測定誤差が境界判定に影響する
現場ポイント:「寸法公差内=必ず組める」「組めた=寸法合格」とは限りません。図面要求と測定結果を分けて判断します。

よくある間違い
- 穴と軸を単品で合格確認しただけで、はめあい状態まで問題ないと思う
- 大文字・小文字を逆に読み、穴と軸を取り違える
- H7/g6の数値を、基準サイズに関係なく固定値だと思う
- IT等級の数字だけで、すきまばめ・しまりばめを判断する
- H7なら必ずすきまばめだと思う
- 実際に入ったから寸法も合格だと判断する
- 温度、バリ、表面粗さ、真円度などを無視する

🎓 技能検定につながるポイント
技能検定では、記号を暗記するだけでなく、図面上の公差クラスを読み、穴と軸の許容サイズからはめあい状態を判断できることが重要です。
- すきま・しめしろを計算できる
- すきまばめ・中間ばめ・しまりばめを説明できる
- 大文字=穴、小文字=軸を理解する
- 文字とIT等級の役割を分けて説明できる
- 穴基準・軸基準を説明できる
- 最大すきま・最小すきまの計算式を使える
- 測定器の選定理由を説明できる

ミニ問題
Q1. 穴20.02 mm、軸20.00 mm。すきまはいくつ?
答え:20.02 − 20.00 = 0.02 mmです。
Q2. H7/g6のHは穴と軸のどちら?
答え:穴です。大文字は穴、小文字は軸を表します。
Q3. 穴20.000〜20.020 mm、軸19.990〜20.000 mm。最大すきまは?
答え:20.020 − 19.990 = 0.030 mmです。

FAQ
H7なら必ずすきまばめですか?
いいえ。H7は穴側の公差クラスだけを示しています。相手軸がg6なのか、k6なのか、p6なのかなど、穴と軸の組合せで最終的なはめあいが決まります。
数字が小さいほど、必ずしまりばめになりますか?
なりません。数字は主に公差域の幅を表します。すきま側かしめしろ側かは、アルファベットで示す公差域の位置と相手部品との組合せで決まります。
穴と軸がどちらも公差内なら、組立も必ず問題ありませんか?
寸法上のはめあい要求を満たしていても、バリ、打痕、表面粗さ、幾何偏差、温度差などで組付けに問題が出ることがあります。必要に応じて寸法以外の要求事項も確認します。

まとめ
- はめあいは穴と軸の公差域の組合せで決まる
- 穴 − 軸がプラスならすきま、マイナスならしめしろ
- すきまばめ・中間ばめ・しまりばめの3種類がある
- 大文字は穴、小文字は軸
- 文字は公差域の位置、数字はIT公差等級を示す
- 穴基準と軸基準があり、目的に応じて組合せを選ぶ
- 公差付き部品では最大・最小のすきま/しめしろを計算する
- 実務では温度・表面粗さ・形状・バリなども確認する
はめあいは「穴と軸のどちらが大きいか」だけでなく、「公差域のどこからどこまでを組み合わせるか」を理解すると一気に分かりやすくなります。
具体的なH7/g6・H7/k6などの上下偏差は、はめあい公差検索・一覧表で確認できます。

参考規格・一次情報
- 日本規格協会|JIS B 0401-1:2016(2025-06-20確認・有効)
- 日本規格協会|JIS B 0401-2:2016(2025-06-20確認・有効)
- ISO|ISO 286-1:2010
- ISO|ISO 286-2:2010
- ミスミ|はめあい方式の選択

機械検査の教科書

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