第4章|4-6 焼入れすると鋼の中で何が起こる?

焼入れは『熱して水に入れる作業』ではなく、オーステナイトを作り、拡散変態を抑えてマルテンサイトへ変えるための熱履歴です。

焼入れの流れ

①適切な温度域まで加熱、②オーステナイト化、③必要時間保持、④適切な速度で冷却、⑤Ms点以下でマルテンサイト変態、という流れで考えると理解しやすくなります。

加熱中|元の組織がオーステナイトへ

フェライト・パーライトなどの元組織は、鋼種と温度に応じてオーステナイトへ変わります。炭化物の溶解状態やオーステナイト粒径も後の性質に影響します。

冷却中|拡散変態との競争

ゆっくり冷えるとフェライト・パーライト・ベイナイトなどが形成される時間があります。十分に速く冷却するとそれらを抑え、低温側までオーステナイトを残します。

Ms点以下|マルテンサイト変態

Ms点以下に入るとマルテンサイト変態が始まります。これは時間依存の拡散変態とは性格が異なり、主に温度低下に伴って進みます。

同時に応力も生まれる

表面と内部の温度差による熱応力と、組織変態に伴う体積変化による変態応力が重なります。これが変形や焼割れの一因です。

焼入れ後|焼戻しへ

焼入れ直後は高硬さでも残留応力や脆さの問題があるため、用途に応じて焼戻しを行います。残留オーステナイトが存在する場合もあります。

まとめ

第19回の要点は、用語だけを暗記せず、温度・炭素量・時間・冷却速度と組織の関係で考えることです。実際の熱処理条件は鋼種・寸法・前組織・設備・仕様で変わるため、材質規格と作業標準を優先してください。

参考

フィードバック

  1. 炭素が増えると鋼はどう変わる?|硬さ・強さ・組織への影響 のアバター

    […] ← 前の記事 📚 金属熱処理 初心者講座 TOPへ 次の記事 → […]

    いいね

  2. セメンタイトとは?|鋼を硬くする炭化物Fe3Cをやさしく解説 – UG BASE のアバター

    […] ← 前の記事📚 金属熱処理 初心者講座 TOPへ次の記事 → […]

    いいね

  3. 炭素が増えると鋼はどう変わる?|硬さ・強さ・組織への影響 – UG BASE のアバター

    […] ← 前の記事熱処理初心者講座TOPへ戻る次の記事 → […]

    いいね

コメントを残す