焼入れは『熱して水に入れる作業』ではなく、オーステナイトを作り、拡散変態を抑えてマルテンサイトへ変えるための熱履歴です。
焼入れの流れ
①適切な温度域まで加熱、②オーステナイト化、③必要時間保持、④適切な速度で冷却、⑤Ms点以下でマルテンサイト変態、という流れで考えると理解しやすくなります。
加熱中|元の組織がオーステナイトへ
フェライト・パーライトなどの元組織は、鋼種と温度に応じてオーステナイトへ変わります。炭化物の溶解状態やオーステナイト粒径も後の性質に影響します。
冷却中|拡散変態との競争
ゆっくり冷えるとフェライト・パーライト・ベイナイトなどが形成される時間があります。十分に速く冷却するとそれらを抑え、低温側までオーステナイトを残します。
Ms点以下|マルテンサイト変態
Ms点以下に入るとマルテンサイト変態が始まります。これは時間依存の拡散変態とは性格が異なり、主に温度低下に伴って進みます。
同時に応力も生まれる
表面と内部の温度差による熱応力と、組織変態に伴う体積変化による変態応力が重なります。これが変形や焼割れの一因です。
焼入れ後|焼戻しへ
焼入れ直後は高硬さでも残留応力や脆さの問題があるため、用途に応じて焼戻しを行います。残留オーステナイトが存在する場合もあります。
まとめ
第19回の要点は、用語だけを暗記せず、温度・炭素量・時間・冷却速度と組織の関係で考えることです。実際の熱処理条件は鋼種・寸法・前組織・設備・仕様で変わるため、材質規格と作業標準を優先してください。
参考
金属熱処理 初心者講座

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