測定値が寸法公差内でも、部品が組み付かないことはあります。
理由は、組付け可否が「1つの寸法」だけで決まらないからです。実際には、真円度・平面度・平行度・位置度などの幾何特性、バリ、表面粗さ、温度、測定位置、相手部品側の状態などが関係します。
寸法公差内=必ず組み付く、ではない
30秒でわかる主な原因
- 形状が悪い:真円度・平面度・円筒度などが外れている
- 向きや位置が悪い:平行度・直角度・位置度などが外れている
- バリ・打痕・傷がある:局所的に干渉する
- 表面状態が悪い:粗さ・うねり・変形で接触状態が変わる
- 温度が違う:金属の熱膨張で寸法が変わる
- 測定位置が足りない:1か所だけ測ってテーパ・楕円などを見逃している
- 相手部品側に問題がある:組み合わせ全体で考える必要がある
原因① 寸法は合っていても「形」が悪い
最も分かりやすい例が、軸や穴の形状です。
例えば軸の直径を0°方向で20.00 mm、90°方向でも20.00 mmと測れたとしても、それだけで断面全体が完全な円であるとは限りません。ローブ状の形状や局所的な変形があれば、寸法は公差内でも相手部品と干渉する可能性があります。
キーエンスの幾何公差解説でも、サイズ公差を満たしていても、円のゆがみなどの幾何特性によって組立できない例が示されています。
つまり、図面で幾何公差が要求されているなら、寸法公差と幾何公差は別々に確認する必要があります。
原因② 平面度・平行度・直角度が悪い
板厚や高さが寸法公差内でも、面が反っていたり、基準に対して傾いていたりすると組付けに問題が出ることがあります。
- 取付面が反って密着しない
- 穴の軸が傾いてボルトが通りにくい
- 2面が平行でなく、途中で引っかかる
- 直角が出ておらず、組み付けたときに片当たりする
平面度は面そのものの平らさ、平行度や直角度はデータムに対する姿勢を評価します。数値寸法だけでは、この違いを十分に判断できません。
原因③ 穴位置・中心位置がずれている
穴径が公差内でも、穴の位置がずれていれば相手側の穴やピンと合いません。
例えば、2本の位置決めピンに入るプレートでは、それぞれの穴径が適正でも、穴中心間距離や位置度が外れていれば組み付けられないことがあります。
穴径が正しいことと、穴が正しい場所にあることは別です。
原因④ バリ・打痕・異物が干渉している
測定した寸法が正常でも、加工後のバリや打痕が一部だけ突出していると、組付け時に引っかかることがあります。
- 穴入口のバリ
- 端面のカエリ
- 搬送中の打痕
- 切粉や異物の噛み込み
- 塗膜や表面処理の局所的な厚み
キーエンスの加工・検査解説でも、寸法・幾何公差とは別に、バリや傷などの外観・表面状態を確認する必要があるとされています。
原因⑤ 表面粗さ・うねりで接触状態が変わる
寸法が合っていても、接触する面の粗さやうねりが大きいと、実際の当たり方が変わります。
特に密着面、摺動面、シール面などでは、RaだけでなくRz、うねり、平面度、加工目の方向なども機能に影響する場合があります。
前の記事で解説したように、Raが合格していても、うねりや平面度まで自動的に合格になるわけではありません。
原因⑥ 温度が違う
金属は温度によって膨張・収縮します。
加工直後で温かい部品を測定した場合と、室温になじんだ後では寸法が変わる可能性があります。公差が厳しいはめあいでは、この変化が組付け可否へ影響する場合があります。
精密寸法の基準では20℃が標準参照温度として使われますが、実務では材質・温度差・公差・温度補正・社内標準を含めて判断します。
原因⑦ 測定位置が足りない
1か所だけ測って公差内でも、別の位置では公差外ということがあります。
- 軸の入口・中央・奥で径が違う
- 穴の上部と下部で径が違う
- 0°方向と90°方向で径が違う
- 面の中央と端部で高さが違う
このようなテーパ、楕円、反りなどを見逃すと、「測定値はOKなのに組み付かない」という状態が起こります。
原因⑧ 相手部品側にも公差がある
組付けは2つ以上の部品の組み合わせです。
自分が測った部品が公差内でも、相手部品も公差の端に寄っていれば、組み合わせによってすきまが非常に小さくなる場合があります。
はめあいでは、穴と軸それぞれの最大・最小寸法から、最大すきま・最小すきま・しめしろを考える必要があります。
組み付かないときの確認順
- 図面要求を確認する
寸法公差だけでなく、幾何公差・表面性状・注記も見る。 - 測定方法を確認する
測定器、基点、測定力、測定位置が適切かを見る。 - 複数位置を測る
テーパ、楕円、反りなどを確認する。 - バリ・打痕・異物を見る
- 温度を確認する
- 相手部品も確認する
- 必要に応じて幾何公差・表面性状を測定する
よくある間違い
- 1か所の寸法が公差内なら部品全体が良品だと決める
- ノギスだけで形状まで判断する
- 組み付かない原因を相手部品だけに求める
- バリや温度を測定とは別問題として無視する
- 寸法公差と幾何公差を同じものとして扱う
🎓 技能検定につながるポイント
- 寸法公差と幾何公差は別の要求として考える
- はめあいでは穴と軸の両方の公差を考える
- 測定位置・方向を変える理由を説明できるようにする
- バリ・温度・測定力など誤差要因を整理する
- 「公差内なのに不具合」という現象を、測定→形状→相手部品の順に切り分ける
ミニ問題
Q. 軸径を1か所測ったところ寸法公差内でした。それだけで相手穴へ必ず組み付くと判断できる?
答え:判断できません。
軸の真円度・円筒度・テーパ、バリ、温度、相手穴の寸法・形状・位置なども関係します。
まとめ
- 寸法公差内でも組み付かないことはある
- 幾何公差は寸法公差とは別に確認する
- バリ・表面状態・温度・測定位置も原因になる
- 組付けは相手部品との組み合わせで決まる
- 不具合時は図面→測定方法→形状→表面→温度→相手部品の順に切り分けると整理しやすい
参考
機械検査の教科書

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