焼入れで鋼が硬くなる大きな理由は、冷却速度によってオーステナイトからどの組織へ変態するかが変わるからです。
まず結論
一般に、焼入れ可能な鋼を十分にオーステナイト化したあと、拡散変態を抑えるだけの速度で冷却するとマルテンサイトが形成され、硬さが高くなります。ゆっくり冷やすとフェライトやパーライトなどが形成されやすくなります。
ゆっくり冷却すると何が起きる?
原子が移動する時間があるため、炭素の拡散を伴う変態が進みやすくなります。条件によりフェライト、パーライト、ベイナイトなどが形成されます。
速く冷却すると何が起きる?
十分に速く冷却すると、炭素が長距離拡散する時間が不足し、オーステナイトからマルテンサイトへの無拡散変態が進みます。マルテンサイトは一般に高硬さですが、そのままでは靭性不足や残留応力の問題が出るため焼戻しを組み合わせます。
速ければ速いほど良いわけではない
必要以上に厳しい冷却は温度差を大きくし、変形や焼割れのリスクを増やします。目的は「最速で冷やす」ことではなく、必要な組織・硬化深さを得られる冷却条件を選ぶことです。
焼入性との関係
同じ冷却速度でも鋼種が違えば結果は変わります。合金元素やオーステナイト粒径などによって焼入性が異なるため、中心部までマルテンサイト化しやすい鋼と、表面しか硬化しにくい鋼があります。
覚え方
冷却速度は『硬さそのもののスイッチ』ではなく、『どの組織へ変態するかを左右する条件』と考えると理解しやすくなります。
まとめ
第11回では、冷やす速さで鋼の硬さが変わるのはなぜ?を理解しました。熱処理の結果は鋼種・寸法・前組織・加熱条件・冷却条件などで変わるため、実務では図面・材質規格・熱処理仕様・作業標準を優先してください。
参考
金属熱処理 初心者講座

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